10月19日の日経新聞に、こんな記事が出ました。泣く子も黙る会計検査院に、警察庁の仕事のサボりを指摘されてしまったというニュースです。
国が2018~22年度に犯罪被害者らに支給した「犯罪被害者等給付金」について会計検査院が調べたところ、全額の48億7300万円について警察庁が加害者側から回収するための債権管理を怠り、一度も請求していなかったことが18日分かった。9億円超は同庁が請求を放置したため時効の状態になっていた。検査院はこのうち少なくとも2億3700万円は加害者側に支払い能力があったと指摘した。国は殺人などの被害者遺
犯罪被害者等給付金とは
通り魔など、被害者と加害者の間に何ら犯罪動機が存在せず、一方的に理不尽な被害を受けてしまう犯罪があります。かといってそういう加害者に対して民事裁判を起こしても、手間暇がかかる上に賠償を勝ちとれるかは微妙です。そのため、一定の犯罪被害者には国が給付金を出せる制度を作りました。
(公財)ひょうご被害者支援センターのHPによると、この制度は、既存の各種補償制度とは異なり損害の一部補填の要素を含む見舞金的な性格のものだそうで、支給される金額は
遺族給付金 2964.5万円~320万円
重傷病給付金 上限120万円まで
障害給付金 3974.4万円~18万円
だそうです。
国がこの制度に基づいて被害者に一定の給付金を支払うと、被害者が加害者に対して持っている(民法上の不法行為による)損害賠償請求権は、その金額分だけ国に移転することになっています。
わかりやすく言うと、犯罪被害者が加害者に対して裁判で損害賠償を勝ち取るのは大変なので、国がかわりに一定のお金を払ってあげるとともに、その金額を裁判で回収するのは国の責任でやりますよ、と言ってるのと同じですね。
もちろん、国が被害者へ払った給付金が、全額加害者から回収できるとは思えません。が、一部なら回収できたかもしれないのに、そもそも回収するのを忘れていたか、面倒くさいからかわかりませんが、ずっと放置されていて、一部は時効になり、本当は回収できたのにし損ねてしまったということが報じられたわけです。時効になったのは9億円とか。決して少なくない額ですね…。
もちろん悪いのは警察庁ですよ。内部の連携不足だったようです。
ただ、私は思うんです。一般論として、債権管理(取り立て等)の業務って、国だけじゃなく、地方自治体だと、税金のほか、給食費や保育料(今や公立園は激減しているので少なくなりましたが、、、)や何やらの納付金で、多くの部署で発生し、その債権を持っている個々の部署にやらせているのが実態です。
でもそれってめちゃくちゃ効率が悪いんです。だって、債権回収ばかりしているプロじゃないので。人が入れ替わるたびに研修して、難しい制度を理解させながらやらせています。でも、リアルな債権回収って、本当に取り立て(相手を尋ねて支払いを促す)があるから、性格的に合わず、上手にできない職員も多いんですよね。
昔、歳入業務を一元化する構想を某政党が主張していたが、、、
いままさに、選挙期間中なんですが、昔、ある政党が、「歳入庁」を作ろうとしていたということを思い出しました。たしか、税金のみならず社会保険料の徴収なども、国税庁を改組した「歳入庁」にまとめていくべきだ、という主張だったはず。
この主張と100%一致するわけではないものの、税金以外を含む、行政が持つすべての債権は、徴税部門など、お金を徴収することに慣れている部署の人に回収事務を一元化すべきだというのが私の考えです。回収にはノウハウがあります。いまよりずっと効率的にできると思いますよ。
ちなみに、その政党は現在は消滅していますが、後継となる政党は存在します。残念なことに今回の選挙に向けた政権公約というか政策集らしきものを出しているのですが、「歳入庁」は検索しても出てきません。残念ながら…。