なかなかすごいタイトルの本だ
地方行政の世界で、女性職員の出世が男性に比べて見劣りする原因について解明し、どのように変えていくべきかを提言した本です。画像は楽天ブックスのアフィリエイトリンク。興味のある方はどうぞ。
その原因とは、女性だから長時間勤務できないでしょ?→基幹業務ではなく庶務や窓口仕事中心にキャリアを形成→結果的に管理職になりづらいし、なっても苦労する、という話が書かれています。
著者は政令指定都市の管理職だそうですが、自治体として女性登用しているように見せるため、本庁ではなく出先(区役所等)の管理職に多く女性を配置して数合わせする傾向についても指摘しています。
また、そもそも女性に対して、長期的にキャリアを積み上げさせて育成しようという意思が人事部門に薄いので、女性職員自身の意識変革とともに役所全体が変わっていかなければいけない、という問題提起もしています。
肩ひじ張った女性バリキャリ推進論でないところが好ましい
もっとも、この手の本にありがちな、「女性もみんなバリキャリを目指せ」といっているかというとそうではありません。安定した公務員の仕事を続けることが食い扶持を稼ぐ手段と割り切ったうえで地域活動や副業などに生きがいを見出すこともアリ、とも言っています。
役所に限った事ではありませんが、女性のキャリアに対する考え方(自意識)は個人差があまりにも大きいです。女性は男性中心社会の中で迫害されている(女性がキャリア志向を持てないよう男性社会に押し付けられた結果)のだから、キャリア志向じゃない女性も目覚めるべきだ!的な発想で、全員を無理やり引っ張り上げようとする主張をする人がたまにいますが、
(バリキャリは職場結婚した夫に任せて)自分はのんびり仕事をしたい(家事育児を自分が多めに引き受けたほうが夫の仕事の支援にもなる)と割り切って仕事をしている女性は、地方公務員にけっこういます。
このケースで、妻の本音が、「実は私もキャリアを積みたかったのに」ということなのかどうかは、個々に聞いてみないとわかりません。恋愛・結婚というプライベートな部分と、仕事・キャリアという公的な部分のせめぎ合いであり、非常に難しい問題なのです。
こんな本を出して大丈夫なのか?
著者本人があとがきで書いていますが、こんな本を書いて世に問うたら、勤務先では白眼視されることは間違いないです。奥付のプロフィールでは首都圏政令市職員とだけ書かれているので、てっきりペンネームなのかと思ったのですが、東京新聞の取材を堂々と受けているので本名だそうです。文中に出てくるA市というのも、登場する部局名からすると某K市のことなのでしょう。
なぜ女性は「昇進」できないのか。 川崎市職員の佐藤直子さん(50)は長年、自治体職員として働きながら感じてきたモヤモヤの正体を解明し...
正直、実名で書くのは勇気がいることです。50歳ということは、あと10年は役所に勤めるはずですが、(首長から目をかけられでもしない限り)出世は頭打ちですし、人事権者からすれば、職員登用に関わる人事部門や男女共同参画部門には、怖くて配属できないでしょう。博士号をとったら研究者に転職するのでしょうか。
物書きとして思うこと
村木厚子さんによる推薦メッセージが、帯じゃなくて表紙カバーそのものにプリントされているのはあまり見ない方式です。まあ、帯をつけるのって書店の手間ですし、新書とかに比べて部数がそこまで出るものじゃないですから、この方式の方が合理的なのかもね、と最近本を書いていない私は思った次第です。