【書評】中学受験を教育虐待にしないための反面教師的な読み物

 先日、第1子の保育園が一緒だった親子(いわゆるパパ友、ママ友と子どもたち)が集まって再会の機会がありました。集まった4家族がすべて中学受験を目指して勉強に入っていて、そのことで話が合ったのがちょっと驚きでした。

 それだけ、中学受験が普通になっているのかなと思いつつも、決して勉強が得意でない我が子に週3の塾通いを強いている親として、教育虐待になっていないのか、いつも配偶者と議論が絶えない我が家です。

 そんなこともあり、「中学受験体験記」的な本をいろいろ物色して読むようにしています。体験記といっても受験生本人の体験ではなく、受験生の保護者の体験記ですが。

印象に残った本を2つ挙げます。

勇者たちの中学受験

教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏の手による、中学入試の直前期から合格発表のころまでを実況中継的に描写したオムニバス小説です。基本的には、作者の取材に基づく実話をベースとしているとされています。

プライドや、偏差値信仰や、塾の思惑やらに振り回され、超難関校に合格間違いなしと思われた子が不合格になってしまうなど、子どもがズタズタになっていってしまう例などが描かれていきます。親がこうなっちゃダメだな、という反面教師にするために活用できる本ですね。

我が家の場合、連れが中学受験経験者でアクセルを踏み、私は公立出身なので引き気味。両親ともども熱くなると子どもの逃げ場がなくなるっていいますから、一応バランスはとれているのかなあ。

勇者たちの中学受験 わが子が本気になったとき、私の目が覚めたとき [ おおたとしまさ ]

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感想(7件)

君とパパの片道列車(ネタバレあり)

X(旧ツイッター)で、日本で三指に入る超難関校、灘中学校を目指す息子の受験勉強に寄り添う投稿を続けた、アカウント名「灘中への道」さんの投稿を再編集して出版した本です。

本を読む前、私は、よくある「私の子どもはこうやって東大に受からせました」系の、ノウハウ半分、自慢半分の本なのではないかと考えていました。

そういう本は、「生存バイアス」がかかっており、たまたま上手くいった人が、自分のノウハウを示しているだけで、そういう成功体験を読んでも全員には役に立たないことが多いのが関の山です。

なので、半信半疑で読み始めました。というか、どうせ灘中に受かる子を持つ親の書いていくことだから、読んでてモヤモヤするだろうな、って思って読み始めたんですよ。

ですが、この本は「灘中に受かった保護者の自慢話」ではありません。

誤解の原因は、「灘中への道」にあります。これはタイトルではなくて、著者名なんですね。灘中を目指す子どもと伴走する父としての決意を示したXのアカウント名だったんです。最初それに気づかず電子書籍を購入し、読み始めたもので、、、。

灘中への道、ってサブタイトルだとしたら、「灘中に受かった息子を持つ父の、中学受験伴走記録」だと思うじゃないですか。

しかしそうではではなく、、、もうネタバレですが、結論から言うと、この方の息子さんは灘中には届きませんでした。

が、他の関西地区難関校には次々合格し、さらには首都圏遠征して受けた開成中にも正規(繰り上げではない)合格します。

遠くの塾の灘中進学コースに通う息子を毎日塾の最寄り駅まで迎えに行き、帰りの電車の中で勉強に付き合った父親の伴走力も凄いですけど、子ども自身も受験に並々ならぬ決意を持って臨んでいます。それでいて、スマホゲームなどでの息抜きの仕方も知っています。なんという才能。

読み手には、旦那さんに対してツッケンドンな奥さんだけがちょっと不快にも映りますが、まあこれは演出というかネタと考えたほうがよさそうです。

いずれにせよ、この本を読んで感じることは、中学受験は、「本人の資質・性格」「親のサポート」「本人の性格に向いた勉強の仕方」「志望校選び」などがきっちり噛み合わないと、結果は出せないし、最悪の場合教育虐待になってしまうということです。

灘中には届かなかったけれど、完全燃焼して別の中学に進学し、「灘中に行った連中には負けないぞ」と中学で充実した生活を送っているであろうことが推察され、読後感は悪くないです。

ただ、ちょっと斜に構えた感想を言うと、結果的に地頭の良かった子で良かったね、と思うとやはり「生存バイアス」を感じざるを得ませんでした。

うちの子は決してこうはいかないし、子どもに伴走はできませんから。参考にはならないのですよ。

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感想(2件)

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