書評『幽霊消防団員』

消防団とは、公務員たる消防署員以外で、消防活動に従事する地域住民で構成された組織及びその構成員のこと。あなたがお住まいの地域にも、消防団員募集の貼り紙は必ずあるはずですし、消防団の車両・機材保管庫も必ずあるはずです。

その活動に対しては、自治体から報償金は支払われるとはいえ、身の危険も生じ得る仕事なので、担ってくれる方は地元でも尊敬される、、、と思っていたわけです。この本を読むまでは。

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上に書いた通り、消防団の活動には、地元自治体からお金が支払われます。しかし、本来は活動する個人に支払われるものが、なぜか団にプールされ、酒と女の遊興費に充てられているとか。また、実際の活動より多めに活動費を受け取っていたりして、まさに「幽霊消防団員」がいる、みたいな話が書かれています。

さらに、消防団の中には、パワハラじみた悪しき男子体育会的な伝統が残っているため、こうした状況が温存されているようです。

男女共同参画が謳われて久しい中、消防団にも女性団員が加わるようになり、そういった偏ったやり方は、当然問題視されるはずですが、なかなか変わらない現実もあるのかな、と思えます。

他にも、地方移住とかで問題になるのですが、地元の若者は消防団に加わって当然という雰囲気が作られており、それゆえに、消防団を辞められない、異を唱えにくい、異を唱えれば村八分。そして本来公平中立たる役所に不満を言おうにも、ズブズブ(役所と一体化)であるゆえに、不適切な状況を誰も正してくれない、という状況のようです。

消防団を所管するのは地元の自治体や消防部門、その上級官庁は総務省消防庁ということになりますが、不適切な状況への監視の目はまだまだ行き届いていませんし、消防団は、議員とのつながりも深く、あまり不正を暴けないという面もあるそうです。

そこに切り込んだのがこの本。ですが、消防団自体は地元の名士の集まりでもあり、社会奉仕をしているということもあって、この本の主張が大きく広がって、「消防団改革キャンペーン」につながったかというとそうではありません。

結局世の中なんて、ショッキングな出来事でも起きないと社会の関心を集めることはできないのです。虚しいことですが。それこそ「消防団殺人事件」でも起きれば、急に注目を集め、総務省も重い腰を上げるのでしょうが、、、。

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